IPO情報サイトの「抽選配分数」予想はハズレが多い
一部のIPO情報サイトでは、幹事証券会社ごとに「抽選配分数」の予想も掲載されています。
この抽選配分数とは、抽選配分に回ってくる単元数(当選枚数・当選者数)の予想数です。
各幹事証券会社への割り当て株数が決定すると、その割当株数に10%や15%を乗じて算出されているようです。
しかし、この「抽選配分数」の予想はハズレてることが非常に多いです。例えば、100%が抽選配分と言われるマネックス証券も実は100%ではありません。
抽選配分数が大外れしている実態と理由を以下でご説明します。
抽選配分に回っている割合の実態
各証券会社が実際に抽選配分に回した単元数(枚数)は、日本証券業協会(JSDA)を通して一般に公表されています。
例えば、2015年4月28日に東証マザーズに新規上場したGunosy(6047)を確認してみましょう。
主幹事及び副幹事へ割り当てられた株数は以下の通りです。
証券会社 | 割当株数 (株) |
割当可能 単元数 |
野村證券(主幹事) | 5,348,700 | 53,487 |
SMBC日興証券 | 177,300 | 1,773 |
SBI証券 | 177,300 | 1,773 |
マネックス証券 | 59,100 | 591 |
いちよし証券 | 59,100 | 591 |
みずほ証券 | 29,500 | 295 |
岡三証券 | 29,500 | 295 |
岩井コスモ証券 | 29,500 | 295 |
ここで、各社の抽選配分の割合は
・野村證券:10%
・SMBC日興証券:10%
・SBI証券:70%
・マネックス証券:100%
・いちよし証券:10%
・みずほ証券:10%
・岡三証券:10%
・岩井コスモ証券:10%
と言われています。
ところが、実際に抽選配分に回された割合は、上記の値を下回ることが多くあります。
以下は日本証券業協会(JSDA)で公開される情報から、実際にGunosyで個人投資家向けに
・抽選配分された単元数(枚数)
・割当可能単元数に占めるその割合
です。
証券会社 | 割当株数 (株) |
割当可能 単元数 |
抽選配分 単元数 |
抽選配分 割合 |
野村證券(主幹事) | 5,348,700 | 53,487 | 4,278 | 8.0% |
SMBC日興証券 | 177,300 | 1,773 | 161 | 9.1% |
SBI証券 | 177,300 | 1,773 | 365 | 20.6% |
マネックス証券 | 59,100 | 591 | 544 | 92.0% |
いちよし証券 | 59,100 | 591 | 54 | 9.1% |
みずほ証券 | 29,500 | 295 | 28 | 9.5% |
岡三証券 | 29,500 | 295 | 28 | 9.5% |
岩井コスモ証券 | 29,500 | 295 | 28 | 9.5% |
一目瞭然ですが、軒並み、先述の抽選配分割合を下回っています。
マネックス証券は100%が抽選と言われていますが、92.0%でした。
抽選配分の割合が低くなるカラクリ
抽選配分の割合が低くなるカラクリ、つまり個人投資家に抽選配分される単元数の予想が外れる原因をご説明します。
以下の表は、
・割当可能単元数(1)
・個人投資家への配分単元数(2)
・個人投資家への配分割合(1÷2)
です
証券会社 | 割当株数 (株) |
割当可能 単元数 |
個人投資家への 配分単元数 |
個人投資家への 配分割合 |
野村證券(主幹事) | 5,348,700 | 53,487 | 46,498 | 86.9% |
SMBC日興証券 | 177,300 | 1,773 | 1,563 | 88.2% |
SBI証券 | 177,300 | 1,773 | 1,549 | 87.4% |
マネックス証券 | 59,100 | 591 | 544 | 92.0% |
いちよし証券 | 59,100 | 591 | 535 | 90.5% |
みずほ証券 | 29,500 | 295 | 266 | 90.2% |
岡三証券 | 29,500 | 295 | 272 | 92.2% |
岩井コスモ証券 | 29,500 | 295 | 272 | 92.2% |
この表が示すことは、証券会社は約10%を機関投資家等へ配分しており、残りの約90%を個人投資家に配分している、ということです。
この点は、各証券会社の注意文などを丁寧に読み解くと記載されていることです。
■野村證券
例えば、以下は野村證券の「募集等に係る株式等の販売に関する 基本方針」(PDF)からの抜粋です。
抽選に付する数量は、両抽選参加サービスを合わせて、当社の販売数量(オーバーアロットメント分 を除きます)のうち、個人のお客様への販売を予定している数量の10%以上とし、野村ホームトレード、野村ネット&コールへの抽選参加者を対象として当せん者を決定いたします。
#「両抽選参加サービス」とは、野村ホームトレードの「新規公開株式の抽選参加」サービスと野村ネット&コールの 「IPOのお取引」サービスを指します。
ポイントは「個人のお客様への販売を予定している数量の10%以上」という点です。
「個人のお客様への販売予定数量」の10%であり、全ての販売予定数量の10%以上ではありません。
SMBC日興証券
同様に以下はSMBC日興証券の「募集等に係る株式等のお客様への配分に係る基本方針」(PDF)からの抜粋です。
お取引コースが総合コースおよびダイレクトコースのお客様を対象として、同一条件・同一確率の一部抽選(同率抽選)を行い、同率抽選に付す数量は、当社で一般投資家のお客様へ配分する数量の 10% を目処といたします。
この文章の前に以下の文章が存在し、個人等の一般投資家と機関投資家に分類されていることが分かります。
当社は、需要調査期間において、必要に応じて、個人等の「一般投資家」および「機関投資家」のそれぞれの属性 のお客様から購入意向を確認させていただきます。
SBI証券
SBI証券は複雑で
・個人のお客様への配分は70%を抽選配分
・個人のお客様以外(当社金融商品仲介業者の対面取引のお客様を含みます)の配分は10を抽選配分
と記載されています。
金融商品仲介業者には、SBIマネープラザ、住信SBIネット銀行などが該当します。
これら金融商品仲介業者経由で需要申告した個人投資家は、SBI証券の規定上「個人のお客様以外」に該当するようです。
つまり、
1)機関投資家
2)個人投資家
3)金融商品仲介業者経由の個人投資家
の3者への配分割合が肝です。
「3)金融商品仲介業者経由の個人投資家」への配分割合が多い場合、その10%が抽選配分となるため、全体としては個人投資家への抽選配分割合が70%を切ってしまっているようです。
抽選配分数には要注意
以上のように、よく目にする10%、15%、70%、100%という割合は、あくまでも個人投資家向けに販売予定の数量に占める抽選配分の割合であり、機関投資家等への配分が別途存在しており、10%、15%、70%、100%より実際に抽選配分に回される割合は小さくなります。
様々なサイトで紹介されている、この抽選配分割合や抽選配分数(の予想)については、要注意です。
なお、例えば、いちよし証券では、割当可能単元数が50単元に満たない場合、抽選は行われません。
営業部支店(いちよしダイレクトを含みます)及び法人営業本部への配分数量の 合計が50 単元未満の場合は、抽選は行いません
出典:いちよし証券「募集等に係る株式等の顧客への配分に係る基本方針」(PDF)
このように抽選配分は、証券会社によって細かいルールが異なりますので、注意が必要です。
どの証券会社から実際に申し込むのかを検討する上で、抽選配分数(枚数)を考慮することは多いと思いますが、適切な情報収集が必要になります。
#一部の情報サイトでは、(個人投資家向けの)抽選配分割合が古いままのサイトも存在します。証券会社各社は抽選配分の割合を変更したり、ステージ制などの優遇サービスを導入したり、IPO配分方法を変更しています。
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